Yellow abstract of floor level.

欧州M&A最前線 2017年11月

03 November 2017. Published by Nigel Collins, Partner, Head of Japan Desk

M&A(企業の買収・合併)市場の夏休み明けの出足は例年より鈍かったものの、現在は数多くの案件が進行している。テクノロジー企業の資金調達ラウンドが活発化しており、市場に資金が流れ込むとともに、日本企業の間でも動きが見られる。

最近、私はある日系商社によるテクノロジー企業への投資でアドバイザーを務めたが、この商社は株式を取得するだけで協業は一切行わない純粋な投資家としてこの企業に出資した。こうしたケースはもう何年も目にしたことがなく、興味深かった。

前回のコラムで、当社RPCと日立コンサルティングが欧州連合(EU)「一般データ保護規則GDPR)」の包括的ソリューションの提供で提携すると書いたが、12 月8日に両社でセミナーを開催することになった。他社はどうしているのか、何から手をつければいいのか、どのように準備するべきか、何に考慮すべきか、といった点を見ていく予定だ。

セミナーの詳細は下記リンクをご参照いただきたい。

今回は、製造物責任の分野で話題となった興味深いケースをまとめて紹介しようと思う。自動運転車から食品の安全性、製品広告まで、対象は多岐にわたる。

ロンドン消防隊が白物家電のリコール(製品の無料回収・修理)を巡り、回収率向上に向けた「断固たる措置」を求めている。同消防隊はメイ英首相に宛てて、白物家電の安全性に関する法改正を求める公開書簡を送付。是正措置や安全通告の対象となっている欠陥白物家電を使い続けている人が、全国に数多くいることへの懸念を示した。

英広告基準審査委員会(ASA)は、「健康上のメリット」を訴える製品広告を巡り厳しい判断を下した。ノマド・チョイスがソーシャルメディアに投稿した「フラット・タミー・ティー(おなかがぺたんこになるお茶)」の広告を巡り、広告自体と製品名が「保健機能」を思わせるとの苦情を支持した格好だ。英政府が自動運転車および電気自動車(EV)法案を公表した。グレイリング運輸相は年初に、自動車強制保険の対象を広げ、自動運転車のドライバー向けの製造物責任もカバーする法案を提出するとしていた。

米製薬大手ジョンソン&ジョンソンは、通称「タルク(タルカムパウダー)訴訟」で4億1,700 万ドルの損害賠償の支払いを命じられた。この裁判は米カリフォルニア州で起こされたもので、原告は同社の「ベビーパウダー」を使用したせいで子宮がんになったと主張し、陪審もこれを認めた。米国ではこれまでにも通称「タルク訴訟」と呼ばれる同様の訴訟が相次いで起こされている。

覆面調査により、食品安全記録の改ざん疑惑が浮上した。スーパー英最大手テスコ、英2位のセインズベリー、英小売大手マークス・アンド・スペンサー(M&S)、独格安スーパー大手のアルディとリドルの英事業は、鶏肉卸売りで国内最大手の2シスターズ・フード・グループからの鶏肉の仕入れを停止した。英紙ガーディアンと英民放ITVニュースの覆面調査により、
同社が食品安全記録を改ざんしていたことが発覚したため。

折り畳み自転車の英ブロンプトン(Brompton)・バイシクルが、14 万4,000 台をリコールした。車軸の安全性に懸念が生じたため。

注目の取引を以下に挙げる。

  • 三井物産は、独自動車大手ダイムラーなどとの提携の下でEV充電システムおよび蓄電 システムを提供する独モビリティー・ハウスに出資。引き続き資産ポートフォリオの見 直しを進めている。
  • ダイドーグループホールディングスは、トルコでミネラルウオーターの製造・販売を手 掛けるMerpezの株式80%を取得し、同国での地位をさらに強化した。
  • 出光興産は上流事業の再編計画の一環として、連結子会社である出光ペトロリアムUK IPUK)をロックローズ(Rockrose)・エナジーに売却した。

    私生活は今、剣道大会で持ちきりだ。私が所属する剣道クラブと剣道英国代表チームの選手達が様々なチームを組んで善戦している。先日は息子が全英オープンで優勝し、剣道の全英チャンピオンとなった。父親として誇らしく思っている。
Originally published by NNA in November 2017