Purple chairs in reception with side view of corridor

欧州M&A最前線 2017年7月

24 July 2017. Published by Nigel Collins, Partner, Head of Japan Desk

7月は、非常に蒸し暑いハノイでこの記事を書いている。ベトナムは今、強い意欲と勤勉な国民、そして多額の外国直接投資(FDI)に支えられ、どんどん開発が進んでいる。

もちろん日本企業による投資も多い。当社もそうした日本企業のいくつかと、この国での投資のサポートについて話し合っている。今回は少し趣向を変えて、ベトナムの投資について書いてみた
い。

ベトナムでの投資については既に色々と書かれているが、私たちが直面する問題は主に以下のようなものだ。

  • さまざまな取引のしくみに関する判例がないことが投資家には不安となる。
  • 現地通貨ベトナムドン建ての株式投資については為替レート上の懸念がある。
  • 日本企業の対外投資では常にそうだが、当事者間の期待の違いに対処する困難もある。
  • 独禁法上の問題。「当該の合併」が何を意味するのかが明確でない場合がある。
  • 取引進行が全般的に遅くスケジュール通りに進まない。どんな取引でも時間的な余裕を 見ておく必要がある。
  • 標的企業に関する信頼できる公開情報が少ない。
  • 他の国と同様、買収後の組織統合に苦労することもある。現地文化に対する深い理解と コネクションの確立が必須となる。

現地特有の問題への対処能力を持つだけでなく、買収を承認した日本の本社のためにも取引をきちんと成立させることのできるパートナーやチームを選ぶことが、ベトナム市場ではことさら重要となる。

欧州のM&A市場では、多くの案件が控えているようだが、6月に成立した取引の件数は通常より少なかった。このうち興味深い事例を紹介する。

  • 電通は市況に反し、立て続けに3件の取引をまとめた。◇データ分析・デジタル広告を手掛けるスウェーデンのアウトフォックス(Outfox)・インテリジェンス◇デジタルトランスフォーメーションのコンサルティングを行う英国のカスタマー・フレームワーク◇デジタルタレントマネジメントを手掛ける英グリーム・フューチャーズ(Gleam Futures)――の3社をそれぞ
    れ買収することで合意している。

  • 丸紅は、トルコの衣料品・雑貨メーカー、サイデテキスタイル(Saide Tekstil)の株式45.5%を取得することで合意した。同社によるファッション業界への投資としては過去最大規模となる。欧州市場進出に向けた興味深い一歩であるとともに、商社の多くが引き続き投資ポートフォリオの多様化を必要としていることを示す事例だ。
    最後に、中国の古いことわざを紹介しよう。この言葉を聞くと、自分もさらに仕事に励まなければと痛感する。「1年360 日、夜明け前に起きる者で、家族を豊かにできない者はいない」
Originally published by NNA in July 2017