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Mergers and Acquisitions update April 2019

06 April 2019. Published by Nigel Collins, Partner, Head of Japan Desk

Originally published by NNA (https://europe.nna.jp/) in April 2019

セルビアの首都ベオグラードで24日から欧州剣道選手権大会が開かれるのを機に、大型スポーツイベントについて考えている。日本でも、ラグビーのワールドカップ(W杯)と夏季オリンピック(五輪)が相次いで開催される。そこで今回は、オリンピックを取り巻くスポーツ関連法の問題を取り上げてみたい。

2020年東京オリンピック·パラリンピックを特徴づけるのは、何といってもデジタル技術だろう。なにしろメダルさえもが、使用済みの携帯電話やデジタルカメラなどから回収された素材で作られるという。

企業も既にオリンピックを見据えて動き始めている。例えばJR東日本は、人工知能(AI)を搭載したデジタルサイネージ(電子看板)·システムの試験を実施しており、2020年のオリンピックに向け本格展開する計画だ。東京駅などでの実証実験では、AIキャラクターの「AIさくらさん」が、旅行客の質問に日· 英·中·韓国語の4カ国語で答えている。

この種のテクノロジーは、クロスチャネル広告を通じて世界各国の視聴者に到達することを可能にする。広告主は、コンテンツを即時に提供できる機能を生かしてリアルタイムの出来事に対応でき、視聴者がどこにいても、たとえ移動中であってもアクセスできる。

例えば、オリンピックの柔道の入場券を持つ人は、地下鉄で会場の日本武道館に向かう間に、ユーチューブで柔道の試合のハイライトを楽しんだり、デジタルサイネージでパーソナライズされたニュースを見るかもしれない。また、フェイスブックのバナー広告で美味しいラーメン店を見つけたり、伊豆半島で開催されるオリンピックの自転車競技会場への割引運賃についてプッシュ通知を受けることも可能だ。
 

■オリンピックを巡る法的問題

反面、デジタルマーケティングは、多額の協賛金と引き換えにさまざまな権利を 享 受する公式スポンサーと、自社の製品·サービスをオリンピックに関連付ける非公式キャンペーン(いわゆる「アンブッシュ·マーケティング」)を展開する非スポンサーとの間に、新たなあつれきを生み出している。

新技術の台頭により、非スポンサーが非公式キャンペーンを通じて広範な視聴者に到達できるようになる一方、デジタルプラットフォームでは公式スポンサーが権利の侵害を監視したり取り締まるのに実務上の困難が伴う。

日本政府は2020年東京五輪で、国際オリンピック委員会(IOC)の定めたオリンピック憲章を順守する方針を示しており、東京五輪の組織委員会も、公式スポンサーの保護とアンブッシュ·マーケティングの防止に向けたルールを打ち出し
いる。

■2020年東京五輪をカバ・する法規

オリンピックおよびパラリンピックに関する知的財産権や肖像権は、日本の商標法や不正競争防止法、著作権法などで保護されている。より広範な規則の下では、知的財産権の侵害を避けるため、オリンピックとの関連を単にほのめかしただけでも違法な「関連付け」と見なされる可能性がある。

加えて、オリンピック憲章第40条では、公式スポンサーがさらに手厚く保護され
いる。開会式の9日前から閉会式の3日後までのいわゆる「ブラックアウト期間」中に、オリンピック選手が公式スポンサーでない企業の広告に登場することを規制しているのだ。

ところが最近、この第40条が問題視されるようになっている。IOCは2月、選手側からの圧力により、こうした規制は「行き過ぎ」と認め、ドイツ人選手が個人的な宣伝活動について独オリンピック·スポーツ連盟(DOSB)に届け出る義務を撤廃した。IOCは第40条自体の修正を求める声には抵抗しており、宣伝活動の自由を求める選手には、各国のオリンピック委員会と直接交渉するよう促している。

このようにオリンピックを巡っては、スポンサーも非スポンサーもさまざまなハ ードルを乗り越える必要がある。2020年東京五輪にまつわるマーケティング·キャンペーンを検討している企業は、法的な助言を受けるとともに、事前に潜在的なリスク管理を計画しておく必要がある。

当社のスポーツ部門は公式スポンサーおよび非スポンサーを対象に、パートナー シップ契約や広告規制、アンブッシュ·マーケティングといったスポンサーシップ問題を巡る法的アドバイスを常時、提供している。

4月の注目すべき取引を以下に・げる。

  • 英国では、NECの英IT(情報技術)サービス子会社ノースゲート·パブリック·サービシズ(NPS)が、英医療情報システム大手EMISグループの3事業を1,490万ポンドで買収した。スクリーニング検査や予防医療の分野の強化を狙う。
  • 住友商事は、化粧品向け素材の卸売り業を手掛ける仏SACI―CFPAの株式 90%を取得することで合意した。パーソナルケア事業の成長戦略の一環。
  • 日本ペイント(大阪市北区)も買収攻勢を続けている。同社は、建築·工業用塗料などの製造·販売を手掛けるトルコのベテック(Betek)グループを買収。取引額は明らかにされていない。
私生活面では、欧州剣道選手権大会に参加するため、英代表チームと共にベオグラードに飛ぶ。40カ国から約1,000人が出場する一大イベントとなる見通しで、欧州剣道の水準が年々高まる中、面白い試合が展開されそうだ。英代表チームの健闘を願っている。