Revolving door and entrance/exit of building.

欧州M&A最前線 2017年5月

26 May 2017. Published by Nigel Collins, Partner, Head of Japan Desk

市場とメディアは間もなく実施される英総選挙やトランプ米大統領提訴の可能性、先のサイバー攻撃の話題で持ち切りだが、英国では交渉中のM&A(企業の買収・合併)案件数が増えており、投資継続への意欲も高いように見える。これらの交渉の多くが実現するかは、時が経って初めて分かるだろう。

提訴といえば、当法律事務所RPCがこのほど興味深いデータを公表した。英高等法院が手掛ける訴訟のうち世界50位以内の銀行が被告となるケースが、昨年9月末までの1年間に157件に達し、前の1年の115件から37%増えているのだ(法廷審問一覧の分析に基づく)。金融危機後の訴訟ブームが収束する気配は見られないようだ。

この最新データからは、高等法院でこうした銀行が被告となる新訴訟の件数が2011/12年の51件から年々増え、減速の兆しがないことが分かる。

2008年の金融危機の長引く影響に加え、10年前と比べて当事者の訴訟に対する意欲が高まっていることが、世界の大手行に対する訴訟を増やし続けているようだ。
金利ヘッジ商品の不適切な販売など、信用危機に由来する訴訟件数は高止まりしており、その多くはここ1年ほどの間にようやく高等法院に持ち込まれたばかりだ。この背景には、提訴の期限が通常6年とされていることがある。

このように複雑で長期にわたる金融訴訟は、当事務所が得意とするところだ。経済が回復するにつれ、多くの企業は信用危機直後と比べて訴訟に回す資金の余裕が出てきている。加えて、第三者機関が訴訟資金を提供するケースも増えていることが、訴訟件数を押し上げている。

銀行に対してメディアをにぎわす訴訟が数多く起こされていることも、訴訟をためらっていた個人や企業を勇気づけ、提訴へと踏み切らせている可能性がある。英高等法院で過去5年に世界の大手行が関わった訴訟の件数は784件だが、うち58%(458件)は銀行が被告となっている。
4月、英国で見られた興味深い取引をいくつか紹介する。

・日立製作所が昇降機の販売を手掛ける英国のテンプル(Temple)を買収し、欧州の昇降機市場に参入する。欧州市場でハイエンド製品の投入を狙う日立にとっては戦略的に重要な買収となる。この取引は私が手掛けたもので、ここ数カ月はこの案件にかかりきりだった。

・企業向けソフトウエア開発のインフォテリア(東京都品川区)は、デザイン戦略コンサルティング会社の英ディス・プレイス(This Place)の全株式を取得した。ディス・プレイスは脳の活動とソーシャルプラットフォームを結びつける革新的技術「マインドリーダー(MindRDR)」の制作者だ。

・東京電力ホールディングスも事業の拡大に向け、一般家庭向け蓄電池ソリューション事業を展開する英ベンチャー企業モイクサ(Moixa)に出資したが、出資比率は3%にとどまっている。モイクサはスマート・エネルギー技術の開発・製造・販売を手掛け、住宅用蓄電池では国内で上位に立つ。

私生活面では、ハンガリーの首都ブダペストで開かれた欧州剣道選手権大会に英代表チームのマネジャーとして参加してきた。ジュニアチームが準々決勝に進出し、選手の1人が敢闘賞を受賞するなど、一定の成果を収めた。最大の勝者はフランスで、群を抜いて強かった。同国はパリだけでも英国全体を上回る数の人々が剣道をしているという。英国在住の読者で剣道を始めたい方がおられたら、ぜひ私に連絡をいただきたい。強いチームを構築するには、裾野を広げる必要がある。

Originally published by NNA in May 2017

Stay connected and subscribe to our latest insights and views 

Subscribe Here