Mergers and Acquisitions update May 2019
Originally published by NNA (https://europe.nna.jp/) in May 2019
ここ数週間、日系、非日系を問わず顧客の新たなM&A(企業の合併·買収)取引が次々と開始されたり、交渉が進められている。投資銀行の知人たちからも、 M&A取引は活発と聞いている。
以前、このコラムで国家安全保障問題を取り上げたが、今回は、安全保障や公共秩序上の懸念がある外国投資についての欧州連合(EU)の新ルールについて書いてみたい。
EU規則(2019/452)は、EU域内への外国直接投資(FDI)を巡るEU加盟 国 と欧州委員会の協力の「枠組み」を定めたもので、2020年末までの適用開始が予定されている。
■加盟・の義務
加盟国が安全保障や公共秩序の観点からFDIを審査するための国内法を採用する場合は、その法律が透明性を持ち、非差別的で、異議申し立てが可能であれば
良 いとしている。
そ れよりむしろ重要なのは、同規則がFDIの審査に関する加盟各国間の協力システムを生み出している点だ。
◆FDIの審査を行う加盟国は、欧州委と他の全加盟国への通知を義務付けられるほか、他の加盟国や欧州委に見解を求めることができる。
◆加盟国は、FDIが行われている他の加盟国に対し、その投資が審査されているかどうかを問わず、見解を表明または情報を請求できる。見解を受けた加盟国は、これをきちんと検討することを義務付けられる。
■・州委の・限
同 規則はまた、欧州委員会がFDIの審査を行うことも可能にしており、欧州委は以下のような場合には「意見」を発することができる。
◆FDIが複数の加盟国の安全保障または公共秩序に影響を及ぼす可能性が高い場 合。
◆加盟国の3分の1が、自国の安全保障や公共秩序にそのFDIが影響を及ぼす可能性が高いと考える場合。
◆FDIが一つまたは複数の加盟国で行われる場合に、いずれかの加盟国が欧州委に意見を求めた場合。
◆FDIが、EUから多額の資金援助を受けているプロジェクト(全地球航法衛星システム「ガリレオ」など)や、EU支援プロジェクトに影響を及ぼす場合。
ただし、欧州委の意見は当該加盟国に対して法的拘束力を持たず、助言的な性質のものにすぎない。加盟国は欧州委の意見を考慮する必要があり、それに従わない場合には説明を求められるものの、FDIに関する「最終決定」は当該加盟国の「単独責任」であると明記されている。
英政府が同国の新法案に基づき、FDIの審査を行うと決めた場合、その案件が欧州委にも照会されれば、より時間がかかる可能性が高い。
一 方、英政府がFDIの審査を行わないと決めた場合は、その案件が別途、欧州委に照会されても、欧州委の意見公表を待って取引を完了する必要はない。ただし各当事者は、欧州委が取引完了から最長で15カ月を経て意見を公表する可能性もあることを認識しておくべきだ。こうした意見は単なる助言的なものだが、それにより英政府が事後措置に乗り出す可能性もあり、こうした措置には取引の解消も含まれる可能性がある。
5月の注目すべき取引を以下に・げる。
- 体験型旅行の予約サイトを運営する独新興企業ゲットユアガイド (GetYourGuide)は、ソフトバンクグループとサウジアラビアの公共投資基金 (PIF)が主導するソフトバンク·ビジョン·ファンド(SBVF)から4億 8,400万ドルを調達した。ミレニアル世代の若者に人気のツアーやアクティビティ ー のラインナップを拡充する狙いだ。
- SBVFは、英金融サービスのグリーンシル(Greensill)にも8億ドルを出資した。グリーンシルは、企業に運転資金を提供するノンバンク企業だ。
- 富士フイルムは、ドイツの内視鏡処置具メーカー、メドワーク(medwork)を買収すると発表した。これにより、内視鏡用処置具事業に本格参入する。
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