Sunrise/sunset of entrance of the RPC building.

連載コラム・欧州M&A最前線>12月・1月

31 January 2019. Published by Nigel Collins, Partner, Head of Japan Desk

2019年の幕開けは、東京と香港への出張で忙しくも生産的だった。ブレグジット問題の目まぐるしい展開は、やはり大きな話題となっていた。英国の誰もがそうだろうが、交渉がここまで遅れ、まだ合意が成り立っていないことに私も驚いている。(

買収劇が続く小売業界

そんなブレグジットへの懸念をよそに、ロンドンではM&A市場が引き続き活況を呈している。小売業界では、商店街で店舗展開する企業をはじめ、多くが苦戦している。当社はおそらく英国最強の小売業界担当チームを擁し、最近では英大手百貨店ハウス・オブ・フレイザーや自転車販売エバンスサイクルズの買収など数々の取引を手掛けた。この原稿の執筆中には、英音楽・映像ソフト販売大手HMVが、カナダの同業サンライズ・レコードを運営するサンライズ・レコード・アンド・エンターテインメントに買収されることが決まったが、当社は対抗馬の引受先候補企業を担当していた。この市場では今後も買収や合併が続く見通しで、適切な買い手にとっては好機だろう。

コーポレートガバナンス規約が刷新

小売業界といえば、当社の小売業向けニュースレター「リテール・コンパス」の最新号で、小売企業に影響を与える向こう半年の主な法規制と政策の変更を取り上げている。https://www.rpc.co.uk/perspectives/retail-therapy/retail-compass-navigating-future-change-new-year-edition/

その一つが、コーポレートガバナンス(企業統治)と、取締役会の実効性に関するガイダンスの改定だ。同規約は登記が英国かどうかを問わず、「プレミアム・リスティング」区分でロンドン証券取引所(LSE)に上場する全ての企業に適用され、2019年1月1日以降に始まる会計年度が対象となる。

改訂版規約は以下の5項目から成る。

1 取締役会のリーダーシップと企業の目的

2 責任の分担

3 取締役会の構成、継承、評価

4 監査、リスク、内部統制

5 役員報酬

規約は大幅に改定されており、書面上の形式的なチェックよりも規約原則の適用状況についての報告を重視することで、企業統治を実現しようとしている。

規約を順守しない企業に説明を求める姿勢は変わっていないが、2019年1月1日以降に始まる会計年度からの主な変更点として、以下の報告が求められている。

・取締役会がどのように目的や戦略を設定し、目標を達成、成果を出したか。

・取締役会が2006年会社法の第172 https://www.rpc.co.uk/perspectives/retail-therapy/retail-compass-navigating-future-change-new-year-edition/companies-miscellaneous-reporting-regulations-2018-in-force/ に基づく義務を果たし、同項に規定される事項を考慮する上で、株主などの関係者とどのように関わってきたか。

・取締役会が社外取締役や従業員の任命した取締役、正式な諮問委員会などを通じて、より広範な従業員の意見をどのように考慮したか。

企業が注意すべき点は、株主の重大な反対(取締役会の決議案または決議撤回案に議決権の20%超の反対票が投じられた場合)に対しては、それまでに公に対処しておく義務があることだ。

また、旧規約では前年にFTSE350種指数入りしなかった中小企業に対する適用を一部免除または緩和していたが、こうした措置が見直され、場合によっては廃止されているので、中小企業は気を付ける必要がある。

今月の興味深い取引を以下に挙げる。

積水化成品工業は独子会社のセキスイ・プラスチックス・ヨーロッパを通じて、独自動車部材メーカーのプロシート(Proseat)などグループ8社の株式75%を取得することで合意した。同グループは欧州6カ国で事業を展開し、積水化成品工業の販売機会を拡大すると見込まれている。当社は独法律事務所アーキス(Arqis)と共にこの取引を担当した。

日立製作所は、スイス・スウェーデン資本のエンジニアリング大手ABBのパワーグリッド事業を買収することで合意した。株式80.1%を約64億ドルで取得する。ABBは今後も残り株を保有し、自社株買い戻しなどを通じて最大78億ドルを株主に還元する計画だ。

英国の有名なエールビール「ロンドン・プライド」などを展開する英フラー・スミス&ターナー(Fuller, Smith & Turner)は、ビール・サイダー事業などをアサヒグループホールディングスに2億5,000万ポンドで売却することを決めた。フラーは174年の歴史を持ち、数多くのビールを展開する。

今年は幸運にも剣道の初稽古を日本で行うことができ、くたくたに疲れたものの素晴らしい気分転換となった。高い精神性をもって正しい剣道を行うことの大切さを、先生のおかげであらためて思い出した、良い新年の幕開けだった。

 

Originally published by NNA in January 2019. 

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